ふるさと内尾の忘備録
 
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■ からだにクスリ


ちょっと暖かくなった季節、山を歩いていると、しゅるしゅるしゅる・・みしみしー
と、カヤの中から独特の音が聞こえてきます。
または、夏の終わりごろ、アスファルトの上になんか長いもんが、文字通り(もうネタバレ)
蛇行してたり、だらーんとしてたり・・・
独特の模様、他の種よりちょっと短くて太い。
なんの話って・・本州の毒蛇の親方・マムシです。

今年(2017年)、マムシがとにかく大発生。在所にはもうマムシを素手で生け捕りできる人が限られていて、T男さんとK男さんの登場です。
区民の誰かから、なぜか喜兵衛に電話がかかってきて、
「背戸にとぐろ巻いておる!K男さんに連絡してマムシを退治してほしいって言って!」
何で私が?と戸惑いつつも連絡してそのお宅へK男氏を出向させます。
K男さんの家の庭の、逆さにした植木鉢の中に、どんどん集まっていく生きたマムシ。
何かむにゅむにゅ動いているんですけどぉ〜ああああ
半分は焼酎に浸けてマムシ酒。半分は素焼き。
どちらも生きたままじゃないとダメなんだそうで、
不純物を出させて、ある程度まとまった量になってから処理されます。
昔はこういったものも、普通に換金されていたとのことで、富山から薬屋さんが買い取りに来たとか、鶴来の某薬局に持ち込めば一匹数千円の値がついたという話。
何に使うのかというと、もちろん滋養強壮です。
現代はもう、マムシを欲しがる人が少なくて引き取ってはもらえないそうですが、
内尾人の感覚では、やっぱりこれは身体に薬。

東京土産の雷おこしが入っていたカンカンに、何重にも包まれた怪しい白い粉。
実は何を隠そう、私もマムシ愛飲者です。
出産してしばらくの頃、2年も連続でひどい夏風邪をひいてしまいなかなか治らない日が続いていました。
その時に近所の人がお見舞い替わりにマムシパウダーを持ってきてくれたのです。
最初は怖いし気持ち悪いし、だったのですが
それを飲んだら
あら不思議、夏風邪は嘘のように良くなって
以来、ちょっと疲れたな〜って時、今日は働き過ぎたって時、そして夏が暑すぎる時。
たびたび、小さい匙一杯分をピンポイントで何日間か飲んでます。
だからなのか、あれ以来夏風邪はひいていません。
ずいぶん後で思い出したのですが、実家の金沢のおばあちゃんも、じろ飴にマムシ粉を混ぜて風邪をひいた孫に食べさせていたような記憶が・・定かではありませんが。

内尾に限らず、山の暮らしでは昔はどこの家にも、カラカラに乾いた姿焼きを
常備薬のように吊るしてあったりしたのですよ。
身の素焼きに限らず、皮を絆創膏がわりに使ったりするんです。
私が山でおでこをぶつけて切った時、今は亡きある方が
「これを貼っとけ」と言って、マムシの皮(脱皮したやつ?かな)をくれたんです。
若いころ、爬虫類のパンプスだの、リザードのベルトだの、さんざん私は見慣れたそれなのに
現物はやっぱりグロくて、結局それを絆創膏には使えませんでしたが、
皮は化膿したおできなどに治癒効果が高いそうです。

珍重に値する最強の民間薬。
手つかずの自然が残る内尾には、昔と変わらず生息しています。
主人のいとこもマムシコレクターなので
「K谷とE山に、マムシいっぱいおるぞ」と教えてあげたら
「しっ!それ誰にも絶対言うな!」と口止めされました。
もう今の時代、欲しがるひともそんなにいないんですけど。
私、口固いんで誰にも言いませんよ。